
電子手形とは何か?
近年、電子書籍、電子マネーなど、さまざまなモノやサービスが電子化され、どんどん便利になっています。手形を使った決済方法でもこの流れに従ったサービスが出てきています。今回は、電子手形についてご紹介します。
電子手形とは…
従来の紙媒体の手形を電子化したもので、パソコンやファクシミリを使って、手形の振出し、譲渡、取立て等を行うことができます。電子手形決済サービスを「電手(でんて)」と呼ぶこともあります。
これは電子記録債権法に基づくサービスであり、窓口は銀行ですが、電子手形等の記録原簿を備えて記録や内容の開示を行う登記所のような存在「電子債権記録機関」があり、運営されています。
電子債権記録機関は、メガバンクの系列ごとに「日本電子債権機構株式会社」「SMBC電子債権記録株式会社」「みずほ電子債権記録株式会社」があります。
利便性の飛躍的な向上
それでは、電子手形のメリットとサービス内容を見ていきましょう。
従来の紙ベースの手形を譲渡する場合、手形の裏に記名捺印するなど裏書の事務作業が必要であり、割引を依頼する時にも、手形を銀行に持ち込んで煩雑な手続きをしなければなりませんでした。
電子手形では、譲渡も割引もパソコンやファクシミリで手続きを完了することができます。
また、通常の手形はその券面に手を加えずそのまま譲渡や割引に出すしかありませんでしたが、電子手形では、1つの手形を分轄することができます。
例えば、500万円の手形を受取った場合、A社に200万円、B社に120万円、C社に80万円など、分割して譲渡することができ、残った100万円はそのまま支払期日まで置いておくことも可能ですし、割引依頼することも可能です。
この分割は1,000円以上1円単位で可能であり、手形を受取った当日から資金化(割引)ができます。
なお、電子手形の割引には、「定期割引」と「都度割引」があります。定期割引は、手形の支払企業と割引希望日を事前に登録すると、手形振出日の同日付で毎回自動的に割引が行われ入金されるサービスですが、このための手続きは初回の1度だけです。
都度割引は、通常2営業日後にお金を受取ることができます。
手形額面のうち必要な金額だけ資金化できることも便利な点です。加えて、電子手形は都度の審査が不要ですので、急に資金が必要になった場合でも、即対応が可能です。
事務負担の軽減
電子手形は券面がないので、金庫で保管管理する必要がありません。また、支払期日(満期日)が来ると従来は銀行へ出向いて取立依頼の手続き等をしていましたが、電子手形では、満期日の2営業日前に記録機関から電子メールまたはファクシミリで連絡があり、満期日当日に自動入金となります。
したがって、受取り側が行うべきことは、パソコンから口座残高を確認することだけです。
コストの削減
電子手形は、以下の点で、従来の手形に比べてコスト削減となります。
■電子手形は印紙税の課税対象外となっています。
■ペーパーレスですべてが電子処理のため、手形の郵送にかかる費用も必要ありません。
■従来の手形に比べて銀行での割引料(金利)が安い場合があります。
■金額を分割して必要最小限だけの割引ができますので、無駄な割引料が発生しません。
セキュリティの向上
電子手形は、盗まれたり、紛失したり、偽造されるような物理的なリスクがありません。
ただし、あらゆる作業をパソコンやファクシミリで行うため、コンピューター上のセキュリティ対策は今まで以上に必要になります。パソコンでログインする時の厳重な個人認証や不正アクセス防止の仕組みが必要となります。
電子手形を利用するための流れ
電子手形を振出す会社、受取る会社、譲渡する会社は、「取扱銀行」及びその銀行が指定する「記録機関」と電子手形決済サービスの利用契約を締結しなければなりません。契約締結に際して、銀行による審査が行われます。
この契約は、原則として最初の1回だけであり、郵送のみで完結することができます。契約締結にかかる手数料は不要ですが、印紙代、商業登記簿謄本、印鑑証明書などは必要です。
電子手形を振出すためには、まず銀行に対して受取人を債権者とする電子手形の発生依頼を行います。記録機関でその発生が確定すると、それが銀行を通じて振出人と受取人に通知されます。割引も譲渡も、同じ流れで、依頼、確定、通知がなされますが、ユーザー企業はすべてパソコンまたはファクシミリでの操作となります。